白糸馨月

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お題『星空の下で』

 昔、夜になると星空数え切れないほどきらめく空の下、山奥の中で育った。大学入学を機に東京へ来た時、夜になっても街が明るいために空が明るくて、星なんてぽつ、ぽつとしか見えないことに驚いた。
 それから東京での生活が楽しくなって、空を見上げることなんてなくなって、サークル仲間と酒ばかり飲む日々を送っていた。
 大学も四年になろうとしてる時、姉から連絡が来た。姉は俺と違って、地元が好きで「東京なんて、人が多くてやだ。私、この場所から離れたくない」と口癖のように言ってた。そんな姉から「私、結婚するから。顔合わせするから地元帰ってきなさいよ」と連絡が来た。
 正直、帰るのがめんどくせぇと思った。だが、さすがに姉の人生の節目だからすこし戻ることに決めた。

 地元は、東京から大分はなれたところにあって最寄りの駅に着いた後、さらに車で一時間程度のところにある。車では、父が迎えにきてくれた。
 車を走らせながら、空がだんだん暗くなってきて、きらめきが次々に生まれてくる。その時、俺は久しぶりに空を見上げた。

 昔、姉が言っていたことがある。

「なにもないけど、空だけはずっと綺麗なのよね、ここ」

 なにもないのに耐えられなくて東京へ出た俺と違い、姉はこの空が好きで離れたくなかったのだ。だんだんときらめきを増していく夜空を見ながら、俺はもうすこし地元へ帰る頻度を増やしてやるかなと思った。

4/6/2024, 5:37:59 AM