椋 muku

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目覚ましの音で目を覚ます。そういえば今日は休日だった。昨日、時刻設定を変えていなかったのだと今になって気付く。久しぶりに早起きした休日。親も起きていないだろう。僕は財布を持って1人、少し遠くのコンビニへ向かった。

朝の空気はさすがに冷え込んでて思いきり吸うと鼻が痛い。それでもこんな時のランニングは体内から徐々に温まって心地良い。コンビニに着くとホットコーヒーを買い、近くの公園でひと休みした。ほろ苦いこれを保育園の頃は飲みたくてたまらなかった。大人の味。そう言われて子供扱いされている事が無性にもどかしくなってしまったのかもしれない。

「お。あれ?クロじゃん。なんでこんなとこいんの?」

グビっともう一口含んだこれは先程までと一変し、とんだ不味いものに変わってしまった。

「おい、無視かよ。先生になんて無礼な事すんだよ?」

「おはようございます、シロ先生。しかし残念ながらここは学校ではありませんし今日は休日です。なので今はあくまで他人です」

「おいおい、酷い言われようじゃねぇか。まぁいいや。そんでクロはここまで何しに来たんだ?」

「シロ先生には関係ねぇです」

「その格好からしてランニングかなんかだろ。若いって良いねぇ。俺はドライブがてらタバコを買いに」

「流石です、ヤニカス先生。それじゃ、僕帰るんで」

「おーおー、待ちぃ待ちぃ。送ったるからちょっと面貸してぇな?」

「え、何その急な関西弁…それに面って…キ、キモ」

そんなこったで僕の意思に関わらず首根っこ掴まれて先生の家まで来てしまった。

「その辺好きに座って」

「うわー。なんか先生ん家なんもねぇくせにヤニ臭ぇ」

「韻踏んでる?あー飲みモンはビール…しかねぇな」

「なんでその一択しかないんですか。未成年に酒はアウトでしょ。さっきコーヒー飲んだし遠慮しておきます」

「あ?そうか。クロ、タバコ吸うけど平気?」

「先生ん家なんで何も言えないッスけど、この後僕になんかするなら吸わないで貰えると助かります」

「おう、じゃ、やめとくわ」

「それよりなんで僕を先生ん家に連れてきたんですか?僕なんかしました?休日まで説教とか嫌なんスけど」

「ん?あーほら、今人肌恋しい季節だからさー」

「シロ先生本当に20代ですか?おっさんみたいでドン引きッスわー」

「どうせ彼女も奥さんも出来ないから良いんだよ」

「僕の他にも色々手出してるみたいですもんね(棒)」

「あ?何の話だ?そりゃあ告白のために倉庫とかその辺呼び出されるけどクロ以外は手出してないぞ」

「は?そもそも僕に手出してる時点で先生終りじゃないっスか。とんだ屑教師がいたもんだ」

「そんな事言うなよ。それより容姿が良いってやっぱり困るなぁ(ドヤ)」

「なりたくない人間No.1ですわ。そろそろ帰ろうかな……はは(ドン引き)」

「おい、待てよ」

立ち上がった僕は手を引かれ先生の膝に座った。そしてヤニカス先生にギュッと抱きしめられる。

「いつもに増してクロの匂い強いな。いい匂い…………なぁ、いい?」

「はぁ。。。どうぞお好きにして下さい」

ヤニクソ野郎先生の寝室は不思議とヤニの匂いが何処からもしなくてベッドは先生の匂いが染み付いていた。特に何も思わなかったが胸の奥がむず痒いようなそんな気がした。とりあえずこの感情を気持ち悪いということにしておこう。




「ごめん、時間遅くなったわ。送る準備…」

「良いですよ、もう少しゆっくりしてても。こんな事もあろうかと親には連絡入れておいたんで」

「え……ク、クロー!いつもツンツンしてばっかのくせにやっぱ俺の事好きなんだなー」

「気、気持ち悪いからその解釈止めて下さい。あと、もっと離れて下さい、カス先生」

「おい、ヤニ吸ってないからってヤニを取るな。ただのクソ教師に聞こえるだろ?」

「だってその通りじゃないっスか」

暑苦しいはずなのに心地の良い筋肉質な包容力のある体が僕を包み込む。

「あったけーな、クロは」

何も言えない沈黙。その時僕はこの腕の中で何を考えていただろうか。ふと首筋に柔らかいものが触れてピリッと痛みが走った。

「…んふ」

「あっ!おい、何がんふだ!残るから跡は付けんなって散々言ったじゃんかよ、この■■■■■■■■■教師!(自主規制音)」

その後、僕は無事に家に帰還した。いつもより早起きした甲斐があったのかなかったのか。。。いや、完全にない。あの■■■■■■■■■■■野郎、絶対許さねぇ。

題材「あたたかいね」

1/11/2025, 1:50:33 PM