『枯葉』
枯葉を踏んだときの、あの「ぱり」という音が好きだ。
あの冬の公園。
陽は低くなって、すべり台の影が長く伸びてた。
空気は冷たいけれど、迎えに来た父に手を引かれて歩いた帰り道は、それほど寒くなかった気がする。
私は、わざと落ち葉の多いところを選んで歩いた。
ぱり。ぱり。ぱり。
「そんなに踏んだら、葉っぱがかわいそうだろ」
父は笑いながら言ったけれど、父もこっそり強く踏んでいた。
少し大きな音が鳴ると、ふたりで顔を見合わせた。
あの音は、乾いた音なのに、どうしてあんなに暖かかったのだろう。
いま、あの道をひとりで歩く。
私の手は、もう誰にも引かれていない。
それでも、落ち葉はちゃんとそこにあって、踏めば同じ音がする。
ぱり。
胸の奥で、小さな灯りがともる。
音はすぐに空気に溶けてなくなるけれど、手のひらのぬくもりが、ほんの一瞬だけ戻ってくる。
私はまた、少しだけ強く枯葉を踏む。
誰もいない夕暮れに、あの日と同じ音が響いた。
2/19/2026, 3:14:17 PM