愛してる。
だけどそんな言葉簡単に言えるわけない
「どうしたんだ?」
不思議そうに私を見る幼馴染の拓也。
何となく付き合う?とかのノリで付き合ってて、デートも普通に遊びに行っているみたいだし、なんか、こう、恋人っていう感じじゃない。
「・・・ううん」
考えた末に私は首を横にふる。
その考えを切り出すのが恥ずかしすぎる。
私達、もっと恋人らしいことしない?なんて
絶対に私の口から言えるわけない。
「・・・そっか」
拓也は特に追求せずに、テストの話題に移る。
私はホッとした。拓也とそういう雰囲気になると、どうしていいか分からなくなるから。
結局、私達は友達の延長のノリで付き合っている方が楽なのかもしれない、そう思ったりもする。
ちょっと寂しいけど。
「聞いてる?愛佳」
拓也が問いただすような口調で私に言う。
「あ、ごめん、何?」
考え事をしていた私は、問い返す。
「この間、バレンタインくれただろ?お返し、何がいい?」
「あー、適当でいいよ。気にしないで。安いクッキーとかで」
私がそう言うと、拓也の顔が険しくなったように見えた。
あれ?何でかな?私変なこと言った?
「そういう訳にいかないよ。去年は付き合ってなかったけど、今年は愛佳は彼女なんだから」
何となく拓也が、むくれているように見える。
「前から思ってたけど、愛佳って、俺と恋人って自覚ある?」
何と!私が思っていたことを拓也から言われてしまった。
「それはこっちのセリフ!拓也、遊んでても普通に友達みたいに遊ぶだけで、全然デートみたいな感じじゃないじゃない!」
「それは、愛佳がそういう風なノリで来るから、それに乗ってただけで・・・」
え、そうなの?
じゃあ、私達は、同じこと悩んでたの・・・?
「ごめんね、私、どう接していいか判らなくて・・・。付き合う時も、クラスの大半が付き合ってるよって言ったら、拓也がじゃあ俺達も付き合うみたいな感じだったし・・・」
「あのなー、あれは、きっかけでしかなくて、俺はずっと愛佳のこと好きだったよ」
顔を真っ赤にして私に言う拓也に、私も釣られて顔が赤くなる。
「えっ、そうだったの・・・?」
「そうだって!そんなこと、改めて言えないだろ。愛佳そんな感じじゃなかったし」
う・・・それを言われると・・・。
幼馴染だったから、急に変えるのが難しすぎて。
「・・・ねぇ、それじゃあ手を繋いでもいい?」
私は横にいながらいつも繋ごうか繋ぐまいか出したり引っ込めたりしていた手をスッと出す。
「もちろん、いいよ」
拓也は、迷わず私の手を握る。温かいな、拓也の手。
そのまま少し無言で歩く私達。
私の胸の中にはいろいろな思いが駆け巡っていた。
拓也が足を止めて口を開く。
「好きだよ。だから本当はもっと近づきたい」
急に言われて、心拍数の急上昇を感じる私。
「・・・うん。私も拓也のこと好き」
言葉には出せなかったけど、胸の中にあった淡い気持ち。
拓也に付き合おうって言われて急成長して、今は恋心として確かなものになっていた。
拓也に抱きしめられる。
今やっと想いが通じた気がした。
顔を上げて拓也を見ると、視線がぶつかる。
どちらともなく顔が近づいて・・・私達はキスをした。
「・・・ホワイトデーはデートしよう。愛佳が行きたい所に」
拓也の優しい声と表情にドキドキと心臓がうるさい。
「・・・うん、ありがと。あのね・・・」
「ん?」
私は、拓也に封じていた言葉を放つ。
「愛してる、拓也」
重いのかもしれないけど。
どうしてもたどりつく結論。
私は拓也を愛しているから。
次の瞬間、もう一度キスをされる。
キスに感情を乱しに乱される私。
顔が赤い動揺を隠せない私に、拓也は、
「俺も愛してるよ」
と眩しい位の笑顔で言ってくれたんだ。
2/23/2024, 12:36:19 PM