愛してはいけないものを愛した時、人の真価が問われる。
そんな言葉を信じるのだとすれば、きっと私は愚か者だろう。
アンドロイドを愛してはいけない。そんなことは子どもだって知っている。彼、彼女らは見目麗しく、聡明だ。その頭脳には、どうすれば人が喜ぶのかというパターンが、幾万も組み込まれている。そして感情がないからこそ、その規則に従って振る舞うことができる。だから人がアンドロイドに惹かれるのは当然なのだ、と。
わかっている。そんなことはわかっている。だが目の前にいるこの年老いたアンドロイドに、私は手を差し出さずにはいられなかった。
見目麗しくもなく、返答も遅く、頼りない足取りで歩くこのアンドロイドが、祖母のように思えてならなかった。
何のためにそう作られたのかわからぬこのアンドロイドを、私は愛しているのだ。
そのつぶらな瞳が私を捉え、名を呼ぶ。たったそれだけのことで、目頭が熱くなる。亡き祖母とは似ても似つかぬこの機械に、何故思いを重ねてしまうのか。
わからない。わかるのは、私が愚かであることだけだ。
私はきっといつかこのアンドロイドを所持することになるだろう。そうして周囲から笑われながら、幸せ者となる。その確信だけが、この胸にはあった。
4/24/2023, 1:22:47 PM