川柳えむ

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 どこからか足音が響いてくる。
 コツコツ……と、離れているが、確実に。

 幽霊が出ると噂の廃墟。
 話の種にと、深夜一人でやって来た。

 そう。一人しかいないはずなのに、明らかに自分以外の足音がしている。

 ――まずいだろ、これ。

 ダッシュでその場から逃げ出す。
 逃げて逃げて、しかし、とうとう目の前にそいつが現れた!

 人だ。

「あれ、あなたも忍び込んだんですか?」

 どうやら、自分以外にも同じことをやっている人間がいたようだ。
 驚かせやがって。
 でも、そうだよな。そもそも足音がしているんだから、幽霊なわけがない。幽霊には足がないって相場が決まっている。

「でも、おかしいな。僕以外の足音はしなかったのに」

 そいつが言う。

 それから、こちらの姿をよく見て――二人して悲鳴を上げた。


『足音』

8/19/2025, 3:48:51 AM