黒山 治郎

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右目が僅かに痙攣する
戦慄く両の手は机の影へ
傀儡を繰る様に唇の端を上げ
口内を突く嗚咽を無理矢理に嚥下する

些細な事だ、瑣末な事だ
視線の絡まぬ対話など
気に止める必要も無い

嘯いて、欺いて、その度
呼吸は浅くなってゆく
喉の奥も締まってゆく
視界の隅が白に侵蝕され
心臓の音は耳の中で木霊する

笑って、嗤って
分からないなりにも
愛されようと必死だった

失敗しない様にと
それこそ、懸命に
息の仕方を思い出していた

心の中で励ます言葉を唱え
涙腺と感情には重い蓋を
目にも映らない気持ちの揺らぎは
波紋をとめどなく広げ
いつしか大きな波となり
私を飲み込むとも知らぬまま
正される為の治療法なのだと
延々と信仰心を磨き続けていた。

ー 些細なことでも ー

9/3/2024, 4:27:09 PM