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君の目を見つめると、私の姿が映る

クラスのあの子は、目がとても綺麗だ。
透き通っていて、瞳孔がくっきりと見えるくらい明るい茶色。髪の毛も茶髪で、色白の、とにかく色素が薄い女の子。

うちの中学でも稀に見ないくらい明るい色だったから、ハーフだとか、外国人だとか、そんな噂もあったけど、実際仲良くなって話してみると、純日本人なのが驚きだった。
正直羨ましかった。
そんな話を彼女にすると
「でも、そのままが1番似合うと思うな」
と、目を合わせて言ってくるから、私は目を合わせられなかった。
まるで水晶みたいに透き通った瞳。
それに映る私は、彼女みたいに綺麗な色じゃなかったから。

高校生になっても、偶然私たちは同じクラスになった。
彼女は他の高校を第一希望にしていたが、落ちてしまってここに来たらしい。
でも、この学校は…。


ある日、下駄箱で靴を履き替えているときに、職員室の方から怒鳴るような声が聞こえてきた。

「嘘をつくな!どうせ染めたんだろ」

うちの学校は校則が厳しい。女子はポニーテール以外禁止、耳より高く結ぶの禁止、スカート折るの禁止、スマホ持ち込み禁止、男子はツーブロックも禁止。触覚を出すのも禁止…。
もちろん、髪の毛を染めたりカラコン、ピアスなんかもアウトだった。

「相変わらず厳しいなあ」と思いながら、その日はそのまま帰った。


次の日、彼女は変わっていた。

あんなに綺麗だった髪の毛は、ベッタリとした黒になっていて、目も真っ黒になっていた。

「どうしたの」と聞くと
「引っかかっちゃってさ、染めてなんかないんだけど」
と、悲しそうに笑っていた。
カラーコンタクトで不自然に黒くなってしまった彼女の目を見つめると、もう何も写らなくなっていた。
あの子の綺麗さは、黒に塗りつぶされてしまったようで、私は悲しくなった。

4/6/2024, 4:19:45 PM