『秘密の手紙』
「あ……今日も、あった。」
大学の図書館。
人気のない本棚の一角に、最近私は通いつめていた。
「えっと…『貴女の感性がとても好きです。繊細で、時に大胆な発想は私には出せないから。』…ふふ。」
本に挟まれた手紙、というにはお粗末なメモの走り書き。
姿も名前も知らない人との交流だ。
私は先日、誤ってファンタジー小説の構想を書いたメモを挟んだまま本を返却してしまった。
気づいた時に慌てて取りに行ったら、メモの傍に『すてき』と書かれた別のメモが挟まれていることに気づいたのだ。
なんとなく嬉しくて、もしかしたら私がメモを取りに来たか確認するかもしれない、なんて淡い期待を抱いて。
私は新しい設定を書いたメモをそこに挟んだのだ。
数日後、ソワソワと気になって本を見に来ると、新しいメモが挟まっていることに気づいた。
『とても素敵だから、貴女のファンになろうかな。』
そう書かれたルーズリーフの切れ端は、たった1文だけだったけれど、私には何にも変え難い宝物になった。
それから、私とその人は文通というには一方的な、アイデアを押し付けて感想を貰う、ということを始めた。
綺麗な字だから、女性だろうか。
でもなんとなく角張っているようにも見える。
私の『ファン』はどんな人なんだろう。
想像しながら、その人を私の創作の住人にするととても面白いものが出来上がった。
「今日は、私の自信作です」
そう書いて、本に挟んでパタンと閉じる。
「読んでくれるかなぁ」
私の大学生活の楽しい一時。
12/4/2025, 12:30:44 PM