かのこ

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『海へ』2023.08.23


 クリスマスの日に、彼女がいない仲間を集いブラックサンタ軍団と称して街を歩いて、そして、冬の海へ飛び込んだ。
 そんな学生時代を唐突に思い出した。
 あの頃は身も心も寒かった、と告げると彼は苦笑いを浮かべる。
「キミ、地元ではヤンチャだったんだね」
「貴方に言われたくないんですけど」
「あ、失礼なやつだ。俺は優等生だよ」
 心外とばかりに彼は目を丸くする。それこそ心外である。
 優等生なら、若い頃に「ワルイコト」なんてしないし、背中に大きな「鷹」を背負ったりしない。
 そう告げると、彼は声をたてて笑った。
「それもそうだ。優等生サマはこんな仕事してないか」
 嫌味のようなことを言って、ちらりとこちらを見る。赤信号で止まったのをいいことに、顔を近づけてきて、
「こんなワルイヤツに捕まったキミもワルイコだけどね」
 と、囁き落とした。
 途端に恥ずかしくなり俯くと、彼はまたおかしそうに笑う。
「なんてね。ほら、海につくよ」
 青信号で動き出した先に、青い海が広がっていた。
 あの頃は冬の海と同じく、身も心も寒かったが、今はどうだろう。
 夏の海と同じく、熱いのかもしれない。

8/23/2023, 11:11:04 AM