昔は、ただ描くのが楽しくて絵を描いていた。
クラスのみんなが「上手だね」と褒めてくれて、自分は絵が上手なんだと錯覚して。
高学年になって人前で絵が描きづらい環境になっても、陰で描き続けた。
描くのが楽しくて、アイデアがどんどん溢れてくる。
自分は将来絵を描く仕事に就くんだと思っていた。
でも、高校に入った時、ようやく自分は大してすごくないのだと気づいた。
ネットには絵が上手い人で溢れていた。
上手いだけじゃない、みんな自分の世界観を持っていて魅了された。
凄いなと思うのと同時に、私より凄い人なんて五万といて、同級生にすら敵わない私なんて……と思うようになった。
絵を見るのも描くのも好きだけれど、自分の描きたいものが上手く描けなくて、次第には何を描きたいのかも分からなくなって
いつしか絵を描くのが辛くなった。
それにつれて、絵を描く頻度も減っていった。
「もう終わりにしよう」
そう思った時、とある映画を見ることになった。
その映画には、私のように自分の作品に悩みを抱える子がいて、それでも負けずに立ち上がる姿に心を打たれた。
1日のうちの、ほんの1時間少しの事だったけれど、私はその映画を見て、もう一度、絵が描きたいと思った。
映画を見た帰り、スケッチブックと絵の勉強本を買った。
久しぶりにペンを握ったから、少し手に違和感を感じたけれど、このグッとペンを握る感覚がなんだか懐かしい。
久々に描く絵は目も当てられないような不格好なものだったけれど、やっぱり描くのが楽しいなと思えた。
終わりにするのはいつでもできし、もう少し、続けてみようかな。
お題『終わりにしよう』
7/16/2024, 9:56:14 AM