『相合傘』
「………最悪だ」
学校が早く終わり、折角だからと家に鞄を置いてコンビニに来たはよかったものの、雨が降るなんて聞いてない!しかも土砂降り!!
光星は、この上ないほど天気予報を見なかった過去の自分を恨んだ。
スマホは何でか家に置いてきたし、携帯があったところでこの時間、親は仕事をしているから結局呼べない、傘を買おうにも金が小銭数円しかなく。止むことを知っていなさそうな雨粒達を眺めながら、光星は頭を抱えていた。
手に下げていたエコバッグの中を見る。ピノ2個、あんパン1個、ポカリ1本。濡れて困りそうなのは、紙のパッケージで出来ているピノだけ。
「………行けるか?」
このままいてもピノが溶けてしまうし、雨も止みそうにないし、このまま突っ切るかなんて思っていると、横から自分を呼ぶ声が聞こえた。
「光星?」
呼ばれた方向にバッと顔を向けると、兄のそらが傘片手に立っていた。
「兄ちゃん!?学校は?」
「今日は早かったんだ。それよりどうした。お前傘は?」
罰の悪そうに顔をそらす光星を見て、そらは呆れたように溜め息をついた。
「だからあれほど天気予報は見ろと行ったのに」
「だって当てになんないじゃん」
「でもお前、それで毎回痛い目見てるじゃん」
「………ハイ」
その通りすぎて、ぐうの音も出なかった。
「まあいい、ちょっと待ってろ」
そういうと、そらは、頭に?が浮かんでいる光星に傘を預けて、コンビニの中へと入っていってしまった。
もしかして傘買ってくれんの!?なんて思って待っていたら、5分後、エコバッグ片手にそらが出てきた。勿論、傘なんてものは持っていない。
「買ってくれるんじゃないの!?」
「やだよ。昼の飯代でそんなないんだから」
しょぼくれている光星から、預けていた傘を受け取ると、バサッと開き。そっと光星の方に傘を寄せた。
「?」
「?、入らねぇの?」
「えっ!?」
傘を預けられたときよりも困惑する光星を横目に、そらはゆっくり歩き出す。
「入らないなら別にいいけど」
「ありがたく入らせていただきます!!」
雨の勢いも少しだけましになり、雨音も心地いいぐらいの大きさになってきた帰り道。
そういやこいつそういう奴だったなと、思いながら光星は兄の隣を歩いた。
6/20/2024, 8:39:44 AM