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親友が僕の知らない人間と歩いている夢を見た。
それだけならよくある話だろう。僕だって他人から聞けば「だからなんだよ」とツッコミを入れていたことだろうし、なんなら親友に向かって「僕というものがありながら、知らない人間と歩くだなんてっ!」と涙ながらに訴えていたことだろう。無論、嘘泣きだが。親友の冷えた眼差しが目に浮かぶ。
さて、たかが親友が知らない人間と歩いている夢ごときで何をそんなに大袈裟な、と思われていることだろう。
たかが夢。されど夢。
親友との登下校。よくある風景の一コマ。談笑する二人。僕にはその光景をよぉーく知っていた。何故なら、見知らぬ誰かは本来ならば僕がいるはずのポジションだからだ。その証拠、になるかどうかは分からないが、親友と交わした談笑の内容、一言一句そのままだ。さて、これは一体どういうことだろうか。悪夢にしては質が悪いと思うのだが。

「『成り代わり』だな」

聞き馴染みのある声。振り向くと、王座の椅子に座るバグ、ここでいうバグはプログラム上の欠陥のことではなく、悪夢を食べるほうがいた。今日は女性の気分らしい。

「きみなら成り代わりぐらい聞いたことあるだろう?」
「二次創作でいっぱい見ましたね」

特定のキャラクターに書き手の自我が入り込み、理想のエンドへと導く夢小説。

「夢は世界が混ざりやすい。これが、物語の一つである世界線にきみは迷い込んだだけさ。放っておいても害はない」

バグは欠伸をする。彼女?彼にとっては喰うに値しない夢なのだろう。だから、目を覚ませばいつも通り。ふむ。

僕は日本刀を形成する。なるほど?夢の中だから自由らしい。
僕は彼らに足早に近づいた。

「親友が好きなのは良いが、そこは僕の居場所だ。邪魔をしないでくれたまえ」

切り捨てた人間は霧散し、消えていく。それと同時に世界は崩壊した。

目を開けた。
親友も寝ていたようで、眠そうに目を擦っている。

「なんか、ヤな夢見てたわ」

その感想に僕は内心、ほくそ笑んだ。

12/16/2025, 11:31:32 AM