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目が覚めると


目が覚めると、声がした。
遠くからじゃない。とても近く。
俺は驚きのあまり、思わず飛び起きる。

別に普段なら何も思わなかっただろう。俺はまだ学生で、家族と一緒に暮らしているから。
「母さんかなぁ…」とか呑気に思って、せっかくの休日に飛び起きるだなんてそんなこと、するはずがないのだ。

しかし、今日は違う。
…今日は、家に誰もいないはずなのだ。

なのに、
なのに声がする。

その声は確かに俺のすぐ側で発せられたのだ。
声の主はこの部屋にいるに違いない。

寝ぼけていてあまり内容は聞き取れないが、それはあまり聞き慣れない声だった。

「な、誰だよ!!何処だ!!」

叫んでみたが、ビビるあまり声が裏返る。すると、一瞬の静寂が訪れた。

「え…、えぇ?なんで黙る?」

困惑していると、声が聞こえてくる。

「え、お前わざとじゃないの?」

その声は枕の下から聞こえてくる。
しかもその声は…

俺は急いで枕を取った。
そこにあるのはスマートフォン。画面には

「通話中…?」
「なんだよぉ。休日の朝にいきなり電話がくるから、ドッキリかと思うじゃんかよ〜。」

その声の主は、俺の親友だった。バカにしたような声が聞こえてくる。

「その様子だと、寝ぼけて電話かけたんだろ!?お前、夢の中でもまだ俺の事好きなんだなっ。わぁーお、照れるぅ!」

「うるせ、黙れよ…。ていうか、俺にいつもくっついて離れなかった、寂しがり屋高校生は誰だっけ?」

「寂しがり屋っていうか、俺はちゃんとお前のことが好きだから?地獄にだってついて行くし?」

「うわぁ…。」

しかし、本当に電話をかけた記憶が無いのだ。しかも、電話をかけたのに枕の下にスマホがあるだなんて不思議なものだ。

「ていうか、いつから通話中に…」

俺はスマホ画面を見る。そこには

「通話時間、1年…?」




目が覚めると、声がした。

寝ぼけているせいなのか、何を言っているのか分からない。
たくさんの声がする。

でも、その中に親友の声があるのは確かだった。


目の前は一面真っ赤に染まったコンクリート。
少し遠くには赤いペンキ模様のあるトラックが見える。


…なぁ、これ夢だろ?知ってる。だって、


「あ、やっと会えた〜。寂しいから迎えにきちゃった!」


親友は1年前に死んでいるはずだろ?

7/11/2024, 9:43:18 AM