『とりとめもない話』
看板に「住宅地のためここから先徐行」とあった。こんな看板前からあったけ?
自転車のわたしにはあんまり訴えていないのだろうけど。こうやって景観が貧しくなっていくのが嫌だな、ペダルを踏む。
この場所の公園で、佐竹とよくジュースを飲んだっけ。高校卒業したら会わなくなったな。
柵のある家を横目に、その公園にたどり着く。わたしは、自転車から降りた。
時間は止まっていた。何も変わっていなかった。砂場と鉄棒。古い時代に作られた小さな公園。遊具には錆が目立つ。
一つだけのベンチに座った。佐竹はよく、アニメの話をしたな。主人公のライバルが特にお好みだったけ。
大学に入っていろいろ忙しい。いや、楽しいから彼女のこと、忘れていた。たぶん、あの子もそうなんだろう。お互い、うまく行ってるのだと思う。
わたしは、ラインを開いた。卒業式のさよなら、またねで終わっている。
挨拶を書いて、消した。
まだ、まだ、その時じゃない。彼女は秘密兵器。とっても辛いときに連絡しよう。それをお守りにしたら、たくさん頑張れそう。彼女が守ってくれている。
思い出にそっと、よりそって、わたしは、自転車に乗った。ゆっくり行く。空気は冷たかったが、胸には温かいものがあった。
12/17/2024, 9:25:44 PM