NoName

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「ねえ、特別な日ってどんな日だと思う?」
 ソファに深く腰をかけ、雑誌を読みながら彼女は言った。
「……そりゃあ、……何か良いことがあった日だろ」
「抽象的〜。例えば?」
 ぺらっと雑誌を捲りながら彼女にまた質問を投げかけられる。
 どうやらお気に召す答えではなかったらしい。
「誕生日とか、記念日とか……」
「ありきたりだねえ」
 雑誌から顔を上げたかと思えば、殴りたくなるような腹立つ顔をした彼女に鼻で笑いながらそんなことを言われる。
 例をあげろと言われてあげたのにどんな仕打ちだ。
 腹が立つ。
「わたしは毎日が特別な日なのに。『おはよう』って言ったら、『おはよう』って返してくれる人がずっとそばにいるから」
 彼女は幸せそうにはにかんだ笑顔は一瞬で苛立ちを吹き飛ばした。
 手招きすると彼女は余計に嬉しそうに俺のほうへ近付いてくる。何も言わずに俺の腕の中へ潜り込んでくる愛くるしい彼女に頬が緩んだ。


 ――special day

7/18/2025, 11:33:37 AM