百加

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忘れたくても忘れられない


 辛かったこと、苦しかったこと、もう皆は忘れてしまっているか、気にさえしていないこと。私だけが忘れたくても忘れられない。
 傷が治っても傷跡は消えないように。

 文章を書くようになった時、思い出したくない出来事の一つ一つが、書く文章に影響していることに気がついた。あんな出来事でも無駄ではないのかもしれないとその時初めて思った。
 書くことで傷は書くための材料に変換される。思い出すとあの頃がリアルに甦り、余計に苦しくなるのに、書くのをあきらめたくないのはなぜだろう。書けば癒やされるというのは本当なんだろうか? まだ実感はない。

 それでも生きづらいと思ったことや、身が縮むような恥ずかしさ、悲しかった子供の頃の仲間外れも、あの頃の私が踏ん張ってくれたから今があるのだ。忘れなくていいのかもしれない。生きてて良かった。今の私は素直にそう思えている。



#60

10/18/2023, 5:41:43 AM