ミミッキュ

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"怖がり"

「みゃあん、みゃあ」
 数ヶ月前から見回りについて来るようになったが、ルートを覚えたのか最近前を歩いていくようになった。
「みゃあーん」
「ま、まて……」
「みゃう」
 そして見回り中はよく鳴くようにもなった。普段も鳴きはするが、見回り中は普段の二倍、三倍くらい。
 震える手で懐中電灯を持ちながら、室内を照らして確認していく。
「うぅ……」
「みゃあ」
 小さく呻くと、鳴きながら近付いて足に擦り寄ってきた。
「……ありがと」
 身を屈めてハナの頭を撫でる。気持ち良さそうに喉を鳴らすと、再び先を歩き始めた。
 ハナが先導してくれるようになってから、早く終わるようになった。
 俺がずっと震えながら見回りしているのを横で見ていたから、早く終わらせて遊びたくて先を歩くようになったのかもしれない。
 いい歳した大人がまだお化けが怖いなんて、本当に情けない。猫にまで呆れられて。
 中学生の時から何度か克服しようとしたが、どれも失敗に終わって医大二年生辺りで、もうどうにもならないものだと開き直った。
「みゃあ、みゃあ、みゃあーん」
 仕切りに鳴いてくるハナに、ふと口元が緩む。
 完全には拭えなくても、多少和らげる事はできるかもしれない。
「今夜はいっぱい遊ぼうな」
「みゃあん!」
 視線を元に戻して、見回りを再開する。先程まで震えていた光が、真っ直ぐに前を照らしていた。

3/16/2024, 12:45:10 PM