一尾(いっぽ)in 仮住まい

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→ディスってませんよ。

 落ち着いた店内を、滑るようにやって来たホールスタッフが、舞い踊るような優雅な所作で、私の前に大きな皿を置いた。
 桃色のお肉が、こじんまりと勿体ぶって盛り付けられている。
「こちらがメインの『シェフおすすめ、ヤマウズラのロースト、山々を吹き抜ける風(ふう)』でございます」
 おぉう! 一回、聞いてみたかった料理名! 〜〜風! 海賊風とか、山賊風とか―って! 私のたとえ、荒々しいな。もっと穏やかに、春風の戯れ風、とか?? 
 まぁいいや、とにかく、夢だったんだ。シェフのイマジネーションが名付けられてる料理を食べるのが! 
 いいよね〜、何かよくわからんマンションのキャッチコピーみたいで。ワンランク上のアーバンリラクゼーション、みたいな。
 いやいや、ディスってんじゃないよ。むしろリスペクトしてるんだよ。
 いや、本当に。


テーマ; 吹き抜ける風

11/19/2025, 3:49:34 PM