『ハッピーエンド』
これが最良のハッピーエンド。
最高では、ない。最良のハッピーエンド。
○○○
日本は災害の多い国だ。
そんな当たり前の事は知っていたが、まさか自分の身に降りかかるとは思いもしなかった。
大きな地震が起きて、地下に閉じ込められた。
パッと計算したところ、生き残るには——一人分だけ、数が足りなかった。
争いが起こる直前、それは起こった。
「やめてよ。ボク、いらないから」
小さな男の子だった。
母親とはぐれたのだろう。
どこか汚れた衣服を纏い、あちこちに傷を作っていた。
そんな状態でもニコニコして、他者を気遣う余裕のある子だった。
……そう、“だった”。
「ボクにやさしくしてくれて、ありがとう」
階段の一番上から、小さな体躯が舞っていた。
刹那、ガン!って米俵のように重いものが落ちる音がする。
……恐る恐る振り返った先、そこに“ソレ”はあった。
男の子の死体だ。
即死だった。頭部から真っ赤な液体が流れ出ていた。
一瞬でみんなの血の気が引き、争いの気が無くなる。
当然だ、もうその必要は無いのだから。
○○○
これは最良のハッピーエンド。
最高では、ない。最良のハッピーエンド。
胸くそ悪い、最良のハッピーエンドだった。
おわり
3/30/2026, 12:14:17 AM