静寂な個室には、闇が包んでいた。
ある少女は膝を抱え、長い黒髪で顔が隠れた瞳から涙を流して自分の非力を嘆き消えていった友人《いもうと》のために泣いていた
ある茶色い髪を短く切りそろえた少女は、片足を立てベッドに座りひたすら虚空を眺めていた。その手には、紅い宝石がはまった首飾りが握られていた。
ある少女は、青年のような出で立ちとは違いペタリと地面に座り込み俯き、ポロポロと涙が木でできた床を濡らしていた。
ある青年は、両足を抱えじっと自分の闇をメガネ越しに眺めていた。
ある青年は、雨が降る庭に立ちひたすら木に拳をぶつけては俯いていた。⋯雨が涙を隠した。
『異世界物語のワンシーンより』
9/30/2024, 9:43:20 AM