中宮雷火

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【時間よ止まれ!】

時間を止める能力。
僕が有している能力だ。
時間を自由に止めたり、再生することができる。
昔はその能力が如何に便利なのか気づかなかったが、成長するにつれ能力の万能さに気づいた。

数学のテスト中。
巡回する先生の足音、忙しなく動く鉛筆のカツッとした音が聞こえる。
僕はある問題で鉛筆が止まった。
「△ABCと△BDRの面積比を求めよ。」
僕が苦手とする問題だ。
うーん…
考えたけど分からない。
他の問題の答え合わせも兼ねて、時間を止めてカンニングしようではないか。
僕は指を鳴らした。
パチン。
その途端、先生の足音や鉛筆の音が聞こえなくなり、静寂に包まれた。
この状態なら、何をしても良い。
例えカンニングしても、誰かを殴っても。
何かを盗んだっていい。
あと、先生の顔に落書きしてもいい。
僕はクラスで2番目に賢い奴のもとへ行き、
回答用紙を拝借した。
しばらくして全ての問題を確認し終え、
回答用紙を元の場所にそっと戻した。
用が済んだので、時間を再生しよう。
と、思ったのだけれど。
なんだかテストに飽きてしまったので、
もう少しだけこのままでいよう。
僕は教室を出た。

他のクラスも皆必死の表情を浮かべ机に向かっている。
歩いているのは僕だけ。
この優越感、堪らない。

僕は運動場に出た。
ますます優越感を感じる。
みんなはテストに苦しんだまま、
自分は圧倒的な解放感を感じている。
ああ、自由だなぁ。
僕は近くのベンチに腰掛け、天を仰いだ。
そして目を閉じて、ただ風が当たる心地よさを感じていた。
感じていたのだけれど…

「!!!」
急いで跳ね起きた。
時計には7:30と表示されている。
夢、かよ…

9/19/2024, 12:00:30 PM