木弓るん

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みかん

けたたましくドアを叩く音
びっくりしてドアを開けると
ダンボール箱を両手で抱えた君

「どうしたの」

箱を取り上げて
君を家へ上げる
甘い柑橘の香りが鼻腔をくすぐる

「みかん。もらったんだ」

身軽になった君が
さっと居間のちゃぶ台に走り込む

「こんなに持ってこられても困るんだけど」

小柄な君が抱えていたから大きく見えた箱も
自分が持ってみればそんな大きさでもない
だけど中身はぎっしりで
二人で消化できそうな量には見えない

「わたしが食べるからだいじょーぶ
 おコタにみかん。定番よね〜」

楽しそうに手を伸ばす君

「食べ過ぎもよくないよ
 あと、うちはコタツじゃないんだが」

箱からみかんをひとつ君に渡す
君は嬉しそうにみかんをむきはじめる

「この辺の毛布に包まればコタツっぽいし」
「いやいや、それは俺の
 つか、みかんむいた手で毛布触らない」

とりあえずダンボール箱はその辺に置いて
毛布を君の肩にかける
俺もみかんをひとつ手に取って
君の向かいに座ろうとするけれど
君に袖を引かれる

「それじゃ寒いじゃん」

まったく、君はいつだってそうなんだから

君の隣に座り同じ毛布をかぶる
君の温もりを感じながら食べるみかん
酸っぱいけれど、甘かった

12/29/2023, 10:31:48 AM