【夢と現実】
夢と現実の境なんて、あってないようなものだと君は言った。絵に描いたように真っ青な空の下、大きく両手を広げて。
「だって幸せな夢は現実にして、嫌な夢は夢のままにしちゃえば良いだけじゃん!」
本当に馬鹿な人だ。僕たちの見る夢はそんなに都合の良いものじゃない。望まない夢ほど現実になるし、ずっと浸っていたいほどに幸福な夢ほど簡単に壊れてしまう。遠い昔に神の怒りを買った僕らの種族は、そういう運命を定められている。
それでも。それでも君が高らかに笑うから。堂々と断言して僕へと手を伸ばすから。
「……そうだね」
幼子を助けようとして荒れ狂う川に落ち、そうして醜い水死体となった君の姿。夢に見たその光景を夢のままにしておければ良いと、経験上叶うわけもない願いを抱きながら、僕は君の手を取った。
12/4/2023, 9:54:24 PM