どこまでも続く青い空。それを映す美しく凪いだ水面。そこに立ってる自分。
ここ最近良く見る夢の風景だ。
この世界では、あらゆるものが静止している。水面に立っている意識はあれど、私の存在はどこか曖昧で、世界の一部として溶け込んでいるような感覚だった。
たったひとりなのに、孤独感もない。あるのは、爽やかな開放感だけ。眠る前のことも思い出せず、私はただ、青い世界だけを見つめている。
電子音で目覚める。目に飛び込む灰色の天井。カーテンの閉められた薄暗い部屋。
スマホのアラームを止めて、重い身体を起き上がらせる。時刻は午前5時。
ひとまずカーテンを開ける。夢の中とは対照的に、どんよりとした曇り空が見えた。
梅雨の朝だ。今日も雨かな、とひとりごちる。
頭は締め付けられるように少し痛い。低気圧のせいだろうか。夢の中の開放感は嘘みたいだった。
部屋の電気を点けて、伸びをする。今日も1日やるしかない。小さく覚悟を決めて、1日の始まりを受け入れた。
昼休み、食事のために会社近くのカフェに訪れた。窓の外は、今朝の予想通り雨が降っている。
ため息が出た。夢のように晴れ渡ればいいのに、と思う。
午後のために、私はひとり、淡々と口に食べ物を入れていく。
食べ終わって、会計をして、店を出た。
傘を差して雨の中を歩く。
信号待ちの時、横断歩道の水溜りをボーっと見ながら、パタパタと傘に当たる雫が立てる音を聞いていたら、ふいにそれが止んだ。
傘を閉じながら空を見上げると、雲の隙間から日が差してきていた。
視線を下に戻せば、車道の信号が赤になって歩行者信号が青になるまでの間、一瞬、水溜りの水面が凪いで、雲間から現れた青空を映したのが見えた。
歩行者信号が青になって、私以外の人は歩き出した。青空を映した水面は乱されて、先ほどの青さは儚く消える。
それでも、その一瞬の奇跡的な青さは、私の目に焼きついていた。
それは私に、雲の向こうにはあの夢のような青空があることを、思い出させてくれた。
清々しさを胸に、私も歩き出した。
10/23/2024, 12:33:31 PM