伽藍堂になった部屋へ足を踏み入れる。冷たく澱んだ空気を掻き分け、中心に立つ。何もない。すべてなくなってしまった。ほぅ、と吐息を溢す。静かな部屋に、その微かな音がやけに大きく響いた。ゆっくりと腰を下ろす。手にした篠笛を構え、目を閉じる。いつかの夢を思い描き。そして、旋律を奏でていく。
10/31/2025, 10:41:40 AM