今日も目の粗い笊のように、頭から教えられたことをざらざら落としていくいちにちだった。
経験したこと。目で見て耳で聞いて心で感じて、確かにわかったと思った事たち。
頭の中で、それはこんぺいとうによく似た小さな星の形をしている。きらきらと光りながら、無限の闇の中に落ちていくたくさんの小さな星たち。それらを手で掬いたいと思うのに、手を伸ばすこともできなくて、そうやって多くの星をわたしは失っていく。そして、後には何も残らない。わたしひとりの話なら、それでいい。というか、今までずっとそれでやってきたのだ。そこから抜け出す方法がわからないから。
無理に抜け出す道を探して苦しみもがくくらいなら、闇に安住していた方がずっと楽だったから、わたしはそちらを選んできた。
闇も悪くない。どんな姿をしていても、どんなに心根が醜くても、すべてを闇が覆ってくれる。闇はあたたかく、誰からも守ってくれて、安心できる。
でもそれは、母親の胎内と酷似している。闇が終わる日はある日突然訪れ、その日が来たあかつきには、わたしは、ひとりで立って歩いていかなくてはいけない。
消えていく星たちを掴み取る方法を見つけなくてはいけない。周りを見回すと、皆目や髪や肩にきらきらと輝く星を乗せている。それが当然のような、つまらないような顔をして。
星を持つ人達が、つまりわたし以外の全ての人達がうらやましくて仕方がない。でもきっと彼らもわたしと同様に闇を抱えている。わたしの目では見えない、しかし確かに存在する闇を。
星をつかまえたい。それは、日常の大したことの無い具象の積み重ねにあるのだろうか。それとも、ひとからは大したことがないと思われているけれど、本人の中では過酷な自己研鑽を積まないと、獲得できないのだろうか。
わたしは、早くも折れてしまいそうだ。
自分を磨く過程で折れてしまっては話にならない。
人間に頼れなくてもいいのかと思う。音楽や、本や、映画に頼っても、星を捕まえられるだろうか。わたしにはわからない。
星とは、幼い頃自分がどうしても獲得できなかった作文コンクールの賞状のようなものなのだろうか?他の人にできてもわたしに絶望的にできないことなのだろうか。わからないまま今日も星をつかまえられなかったことはひとつだけ確かなことだ。
9/12/2024, 11:03:02 AM