しろ

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「隠された手紙」

二十数年ほど前になるだろうか、彼女は1通の分厚い封筒を受け取った。

その申し出を彼女は熟慮せず親が反対するだろうとか、
私には無理だろうと、
断ってしまった。

その後、彼女は親元を独立したがその手紙をどうしても手元においておきたくて、他の思い出達と一緒に箱に入れて封印した。

その手紙の筆跡も内容も鮮明に脳裏に焼き付いているから、手元に残しておかなくても、
いつでも、記憶の奥の箱から出してこれるるから、彼女はある日他の思い出と共に手放すことにした。

まだ終活するには早いかもしれないけれど、
ひとつひとつ
丁寧に手放していきたいときう。

それが彼女のやり方なのだ。

だから、私は彼女のやり方を否定も肯定もしない。

そのままでいいと思う。
時が経てば、背負ってきた重い荷物も下ろせるようになるようだ。

無理に引き剥がしても逆効果だ。
傷跡が残ってしまう。

かさぶたを無理矢理取ってはいけないのと同じなのだ。

かさぶたが自然と剥がれる時は必ずくる。

少し、最期に少しだけ、手をそっと差し出す。

それが彼女の生き方なのだ。

2/2/2025, 11:41:47 AM