六月の帰路

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「リンゴの色と血の色は赤色かもしれないけど、
実は中身は橙色で、その外側はリバースだったりするものがあるかもしれない。
中身って、見えないから分からないけど、常識は常識としているだけ。だから、リンゴの中身が青色に見えたとしても、私の中身がなにであっても、驚くことは無いんだよ」

彼女は血を吐いて、その血をリンゴに塗っている
君の中身は赤色だよ、まちがいないと僕は言うけど
君はそれを否定する。
「私は信じたくないの。つまらないから」
彼女が言っていた意味がよくわからないけど
分からないままでいいのかもしれない
僕は血が塗られたそのリンゴを剥いて、その白色混じりの橙色のリンゴを口に入れ、咀嚼し飲み込んだ。
君は食べないの、と僕は言いかけた時、とてつもない嫌悪感に苛まれ、果てしない闇に包まれた。



血を舐めると椿が咲いた。
リンゴは青く海のように美しかった
それはどうして生まれてきたのか分からなかった

彼女は嬉しそうに微笑みながら、
青色の血が滲んだ唇に接吻する

8/12/2022, 5:09:29 PM