子どものころ、母のおつかいで、近所に住むおばさんのところへよく届け物をした。玄関のベルを鳴らすと「はーい」と明るい声がして、おばさんが出てきた。届けものを渡すと「あ、ちょっと待ってて」と奥に行ってしまった。
玄関にあるネコの置物や、年季の入った花瓶なんかを眺めていると、おばさんが駄菓子屋にあるようなプラスチックの大きな入れ物を持ってきた。中には、お煎餅が入っていた。砂糖がまぶしてあったり、海苔がついていたり、その入れ物に入っていると、より美味しそうに見えた。
おばさんは、ふたを開けると「さあ、好きなものを選んで」と言う。砂糖がたっぷりついたのを選ぶと、小さな紙袋に、ほかの海苔やお醤油のお煎餅もいくつかいれてくれた。
それから、何度かおつかいに行くたびに、あのプラスチックの入れ物が出てきた。色とりどりの飴や、クッキーの時もあった。おばさんの「待ってて」は、とても楽しみな時間だった。
「待ってて」
2/14/2026, 7:32:41 AM