"夏"
赤煉瓦の高架橋を抜けた先は、図書館に続く緩い坂道になっていた。
坂の途中にはフェンスで囲われた空き地があって。
今頃の時期になると緑が眩しくて、のんびり眺めながら歩いたっけ。
誰かが手入れをしていたのか、たまに草木の顔触れが変わっていたりして見ていて飽きなかった。
向日葵だとか、オニユリだとか、露草だとか。
茱萸はたまに実を失敬していたけど。
中でも、見たことのない蔓がフェンスに巻き付いているなぁと思っていたら、ある日、時計のような花を咲かせたのには驚いた。
時計草。十字架上の花、受難の花とも言われるけど、実物を見るとびっくりするよね。
あの空き地はまだ残っているのだろうか。
フェンスの奥に今も花が咲いていたらいいなぁと思う。
7/15/2025, 8:24:11 AM