かなで

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たとえ間違いだったとしても 

 
あの会話の最後に閉じ込めるかのように抱きしめられた 

目尻にひとすじ流れていた


親友の話を聞くたびに 

何度も何度も心の中を抉られる 

  
 
今日も 忍耐が試される


「もう、どうしようもないでしょ?」とため息混じりに語る 
 
ドラマの総集編みたいにノンストップ 

感想を聞いているフリをして 

少しも挟ませてはくれない 

前屈みがキツイのか座り直す  

困ってる仕草で笑う幸せそうな顔

私の眼の前で 今日もそれは開演する 



あの日 あの時 

私が貴女の代わりにシフトに出なければ 

あの場所には 私が 居たはず 

いや、よそう 

いくら「タラレバ」を思い描いたって 
過去には戻れない 

あの日をやり直すことは 二度と叶わない  
 
交差しない運命だったのだと思うしかない 


でも、 

未だに信じられない  



彼は お酒が一滴も飲めない 



なのに、あの過ちは起きた  



彼には記憶がいっさい残っていなかった 

でも、隣に居たのは親友だけだった 
 

私は彼の彼女でも婚約者でもない 

だから、奪われたわけではない


ただ、お互い、距離が少し近づいていた 

「今度、◯◯を一緒に観に行かないか」

その先を 私は少し 勝手に夢見てしまったから 

この感情が成仏できないでいる





ただ、私の親友と私の気になる彼が結ばれただけ


「……おっそい!」

ワンクッションおいて 私の鼓膜を揺らすあの声

無意識に聞き漏らすまいと集中してる自分が滑稽だ



たとえ、間違いだったとしても  

彼は このまま全てを受け入れるだろう 

逃げも隠れもせず 

策略だとしても 利用されたとしても


たとえ、間違いだったとしても

この、現実からは 私も彼も 逃れられない 


私は 今日も 静かに仮面をかぶる 

「◯◯の親友」役として 


「……お疲れ様。◯◯くんが来たから、私はもう行くね」 

残念そうな顔を向けて「またねー」と手を振る親友   

振り返った彼と視線が一瞬合うだけで 

呼吸を抑制していた事に気が付いた 


今日も無事に 演じきっただろうか
 
仮面は ズレていなかっただろうか 

 
この舞台に 終演は訪れるのだろうか


 
 

4/22/2024, 11:18:49 AM