むぎちゃ

Open App

「ほ〜ら!高い高い!」
「キャハハッ!」
 今この子はどんな空を見ているのだろうか。淡い群青色に染まった青空か、はたまた浮かんでは消えていく秋雲が広がる空なのか。
「見てお父さん!」
 小さな指が指した方を振り返ると、そこでは小さな、とても小さな雲がこちらを見ていた。
「あの雲がどうしたんだい?」
「あの雲はね、一人ぼっちなの。」
「ほんとうかい?それは可哀想じゃないか。」
 そう問いかけると、キョトンとした顔で、私の目を覗き込んでくる。そして口を開くと、不思議なことを話し始めた。
「全然かわいそくないよ。だってね、あの子が一人ぼっちじゃなかったらね、あんなふうに空を独り占めできないんだもん。」
「独り占めなんかしたらいけないじゃない。空はみんなのもの、そうだろう?」
「そだよ?だからあの子は独り占めしてるんじゃん!悪い雲に空を取られないようにしてるの。だから…ほら!優しい雲には譲ってあげてるんだよ。」
 たしかに、今まで小さな雲が持っていた空は、それよりもっと大きな雲が盗っていっている。
「僕はね、あの小さな雲みたいになりたい!みんなのものを守れる人になりたい!」
 君ならなれるよ。と私は心の中で思う。
「そのために、今から雲にタッチしてくる!笑」
「いってらっしゃい。頑張って昇るんだ。
 【高く高く】」#4

10/14/2023, 5:13:58 PM