駒月

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 幸せとは、一体何だろう?
 そう友に問いを投げかけたところ、「人それぞれだよ」と即答された。
 確かにそうなのだが。死と隣り合わせの戦場で戦っている身だ、明確にした方がいいのではないかと思う。
 自分は人々を脅威から守るために戦っている。
 だが、それは果たして幸せのためなのか?

「難しく考えすぎだよ、君は。自分たちにできることをやればいいんじゃないかな?幸せとか不幸せとか、人によって違ってなおかつ定義が曖昧なもの、考えたって意味ないのに」

 友の言う通りだ、すべての人が幸せになるだなんて、起こりはしないのに。

「それでも俺は……皆を幸せに導きたいと思う」
「君がそんなに欲張りだとは知らなかったな」

 笑われてしまった。だが、これでいい。目標だって、夢だって、持つこと自体は誰の迷惑でもないのだから。

「そうそう、皆のことを考えるのは構わないんだがね……君はもっと近くにいる人のことを優先すべきだと思うよ」

 友の視線の先には、いつから見ていたのか……女の部下がこそこそと隠れていた。

「別に、盗み聞きするつもりはなかったんだけどさ」

 そう言う彼女の横顔はほのかに赤らんでいて。
 思えば、最近戦いばかりで優先できてなかったと反省する。

「甘味でも食うか?それでお前が少しでも幸せな気持ちになるならば」
「馬鹿だね、甘味じゃないよ。私はアンタと一緒にいられればそれで……」

 背中をばしっと叩かれ、甘味処へと促される。
 こんな日常が、俺にとっても幸せなのだと言ったら、喜んでくれるだろうか──




【幸せとは】

1/4/2024, 2:28:30 PM