お題《紅茶の香り》
不変な幸福などありはしないのに、哀れな鳥籠の鳥は夢をみる。
きっと信じたくないのだろう。終わりのある幸福、そしてそれが泡沫で、幻想なのだという真実を。
青いエデンを築き、国を失った彷徨う民たちを救い、そして一国の王として祭り上げられた。――砂漠の真ん中に夢の城を、そして美しい水面の夜明けのような鮮やかな紅茶を国の名産品にし、そこからさらに茶畑を拡大していった。
珍しい茶葉のある、砂漠の楽園《オアシス》。
ここへ立ち寄り、そのまま住まう者。――誰も彼もが望みを持ち、だからこそ、ここは美しい楽園なのだ。
俺にはひとつ望みがある。
それを叶えるために俺は。
――華やかで美しい香りとは似合わず、毒々しい味のお茶を飲みながら今日も、果てのない夢をみる。
10/28/2024, 2:25:29 AM