朝、目が覚めると泣いていた。
なんか、すごく悲しい夢を見た。
内容はよく覚えていない。
何か、大切なものを失ったような、凄まじい喪失感があった。
仕事に向かい、駅のホームで電車を待つ。
隣に立った男性が、スマホで動画を見ていた。
「あっ」
この違和感は…デジャヴ。
ホームの向こうの方で、悲鳴が上がる。
一人の男が、駅員に追われながらこちらに走ってきて、その右手には刃物が握られていた。
「あぁ…これか…」
男が、一人の女性に刃物を振りかざそうとした手を、必死でつかむ。
そのままもつれ合って、二人してホームに落ちた。
そこに、自分が乗るはずだった電車がやって来て…。
朝、目が覚めると泣いていた。
なんか、すごく悲しくて怖い夢を見た。
内容は…よく覚えていない。
何か、大切なものを失ったような、あるいは、失うものすら失くしてしまったような、虚無と喪失感。
仕事に向かおうと玄関ドアのノブを掴んだ手に、薬指と小指が無いことに気付いた。
ああ、こうやって少しずつ…。
何故か分からないが、確信があった。
何度も繰り返し電車に跳ねられ、体のパーツがひとつずつ消えてゆく。
そして、泣きながら目を覚ます。
体を失っても、意識は仕事へと向かう。
この世界は…何なんだろう。
ある朝、悲しい気持ちで目を覚ましたが、泣いていなかった。
涙を流す器官を失ったらしい。
もうすぐ、こんな日々も終わるのかな、根拠もなくそんなことを思った。
某月某日、都内の駅で発生した、通り魔とのトラブルによる人身事故。
電車に轢かれ、バラバラとなった遺体の捜索が続いていたが、最後に被害者の頭部が発見され、捜索・回収は終了した。
朝、目が覚めると…そこは、無の世界だった。
仕事へ向かう意識も生まれない。
悲しくはなかったが、すべての終わりを感じて、流れない涙があふれ出した。
7/10/2024, 12:36:05 PM