題:地に足をつけて
常に浮いて移動をしている私は、地面に足をつけて移動することが困難だ。
幼い頃は今ほど技量が無かったので、浮遊魔法を使うとすぐ魔力切れを起こしていた。だから地面に足をつけて移動するなど、造作もないことだった。
でも、たまには浮遊魔法無しで移動してみたくなるんですけど……。
「わっ」
転びそうになって慌てて壁に手を付く始末……。
もうこのまま浮遊魔法で良いかなと何回思っただろうか……。
✧ ✧ ✧
だいぶ浮遊魔法無しで移動が出来るようになって来た。
しかし、「だいぶ」なだけで、まだ不安定だ。
今日は公園で練習することにした。公園なら、走ることも出来る。
(よし)
気合を入れてから。
「……あ!」
ヤバッ、此処は掴むところも無い。つまり、顔面から転ぶ!
「ッ……!」
目を瞑って、手を握りしめる。
と。
「大丈夫ですか?」
いつまで経っても地面に顔がつかず、代わりに腰に温かいものが触れている。
そして、男性の声。
「え、ええ。ありがとうございます」
私を支えてくれた人は、肩までの金髪を後ろで束ね、耳が尖っており、碧色の瞳の青年だった。
(エルフ?)
珍しい。人生で2回しか会ったことがない。
「俺はリンクです。怪我がなくて良かったです。では」
「あっ……」
その人は颯爽と走り去っていった。
その姿と声色に、胸が高鳴るのを感じた。
お題『素足のままで』
8/27/2025, 5:23:01 AM