ひなまつり
母は、
五段飾りの本格的な木目込み雛人形の材料を取り寄せ、
仕事が休みの日や
家事の合間など、時間を見つけては、作っていた。
もう40年以上前のことである。
毎年、五段飾りを座敷に3人の娘たちに
飾ってくれた母。
ある時
母がポツリと呟いた。
自分に雛人形欲しかったのよね。
実家は、裕福でなかったので雛人形など
買えなかったから自分で作ってみたかったのよ。
3人の娘たちにと言いながら、実は、一番
欲しかったのは母。
わかる。
母の年齢に近づき母の気持ち痛いほどわかる。
いつも子供のため24時間母でいたら辛い日もある。
たまに自分も娘に戻りたい。
3月3日の1日だけでも自分のためのお雛様
飾って自分のためのひなまつりしたい。
ささやかな母の夢。
母が亡くなり雛人形は、箱から出して飾らなくなった。
私たち三姉妹は、皆、子供は、男の子だったから
なおさら雛人形は、飾ることもない。
最近、私も小さな雛人形を集め始めた。
母の作った五段飾りの雛人形には及ばないけど。
自分のためのひなまつりをここ数年、
一人密かに楽しんでいる。
母の嬉しそうだった顔を思い出す。
3/3/2024, 2:21:36 PM