かたいなか

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「12月11日が『何でもないフリ』だった」
出たな。前々回投稿分でも紹介した「過去のお題に似たお題の再配信」の具体例。
過去配信分のお題の履歴を辿り、物書きは無駄に勝ち誇ったように唇の片端を吊り上げた。

年中行事と季節ネタ、それから空&星ネタにエモが豊富なこのアプリは、明日の「エイプリルフール」を筆頭に、4月もなかなか手ごわいお題が目白押し。
去年は「沈む夕日」のお題に関連して色々調べていたら「沈む夕陽」なる曲がヒット。
聴いて1秒で物書きは崩れ落ちた――本棚の立花書房を参考に、その手のバーローでも書けというのか。

「おっといけねぇ。あんまり『去年の4月』のお題をベラベラ喋っちまったら、お題配信の楽しみが」
楽しみが減っちまうわな。お題回収的に、物書きは何気ないふりして、去年の4月投稿分を確認しようと、
スワイプして、スワイプして、面倒になってやめた。

――――――

東京の春は、夏になりました。
スマホを確認すると、午前11時現在で25℃。
最高気温なんて真夏日3歩手前の27℃。
猛暑酷暑の去年でさえ、今頃はもう少し涼しかった。
行き交う大勢は薄手、半袖、サマーコート。
厚手のコートを左手、シェークを右手に持つ男女は確実に観光客だ。
大多数が、一応なんともないフリはしてるけど、内心では暑さに参っちゃってることだろう。

ふと、お花が好きな雪国出身の先輩を、
長年一緒に仕事してきて、だけど今月最初の異動で離れ離れになって、以降、どこに居るとも分かんない先輩のことを、思い出す。
春の暖かさに不慣れな頃の20℃で少し弱って、真夏の30℃でぐでんぐでんになって、去年の8月なんか熱中症の熱失神で倒れちゃった先輩だ。
デスクで溶ける先輩は春の終わりと夏の始まり、それから猛暑の風物詩だった。
季節外れの夏日な今日は、部屋のエアコン使ってアイスなんか食べて、何気ないふり、最高27℃なんて知らないふりをしてると思う。

今日の暖かさでだいぶ桜が咲いたのにもったいない。
まぁ私も暑いから花見は明日にするけど。

「去年の今頃は、もう桜、散り始めてたんだ……」
グルチャで所在地不明の先輩にメッセ投げて、暑さしのぎに色々おしゃべりしてたら、
話題は、去年の今頃のハナシに飛んだ。
最速開花の去年は桜が散って、私のその日の占いのラッキーアイテムがペールパープルの花の画像で、
丁度たまたま、先輩の故郷の雪国では、薄紫色した「春の妖精」キクザキイチゲが花盛りだった。
先輩から画像を貰おうと画策して、「あざとい行動は逆効果」って占いのコメントに四苦八苦してた。
その後、妖精のラッキーのおかげか、自業自得案件で左遷させられる係長から、オセワニナリマシタで1箱6000円のチョコ貰ったけっけ。

『今年の先輩の故郷、例のお花の開花状況どう?』
今年も雪国のラッキーにあやかりたくて、それとなくメッセージを送ったら、
『去年に比べれば1週間程度、開花が遅れている』
ピロン、少し間があって、返信が来た。
『やっと第一陣が咲き始めた頃だと実家から』

『だいいちじん?』
『立地条件や日当たり等々が良い場所に陣取っているグループだ。全体としての見頃は来週だと思う』
『去年見せてくれたペールパープルは第一陣?』
『そうだ。薄紫が咲いてから、遅れて白が。
  少し席を外す。郵便か何かがき』

『あれ、先輩?』

『せんぱーい?』

郵便か、何かが、……多分「きた」んだと思う。
その申告を最後に、先輩からの返信がパッタリ。
既読はついてるから、グルチャにログインだけはしてる状態なんだと思う。
でも返信が、5分経っても、10分経っても、15分待っても来ない。
どうしたんだろう。
心配になって電話をかけてみたら、少ししてから、でろんでろんに弱った先輩の声が返ってきた。
『すまない、そとのあつさが、よそういじょうで』
アッ(察し) はい(すべて理解)

私は何気ないふり、何も心配してないふりして、そのまま少しだけ声のやり取りをして、オダイジニで一旦おしゃべりは終了。
雪国出身、雪の人たる先輩を、春の夏日・真夏日に外に出すと秒で溶ける。 今日はそれを再認識した。

3/31/2024, 2:55:29 AM