『主人公として生きる』
大魔王を倒した勇者はその後どう生きるのか。
王子様と結婚したシンデレラは、目を覚ました眠れる森の姫は、大円団を迎えたあの物語の続きは?
人生は点じゃない。その一瞬を生きるだけでは短すぎる。どの物語にも続きがあってサイドストーリーがあって登場人物一人一人が生きている。
僕は僕の人生の主人公なのにそんなことも忘れていた。終わりのない旅は本当は怖い。目的もなく生きるのは怖い。一つの区切りとしての目標は次の目標の布石。そうやって一つ一つステップアップして僕の人生の中の、例えば大魔王を倒したりするんだろうけど。
でも、その後は?考えたことある?ずっと幸せな物語なんてない。最期は笑って死にたいなんて言うけれど僕は自分の最期を見通せるほど達観してない。
人生は片道切符。途中下車はあるけど強制終了と同じ。皆は一律に寿命という旅路を完走する。
当たり前のことが僕は怖いんだ。だから、宗教学とか哲学とかの学問や目上の人に助けを求めるけど、本当は自分で考えなくちゃいけないのはわかってる。
魔王を倒すという目標、王子様とあるいはお姫様と結婚するという目標。それも人生の到達点なんだろうけど、僕は気づいてしまったんだ。
到達点だけを見ている自分に。
「帰るまでが遠足ですよ」
誰もが聞いたことのあるこのフレーズがリフレインする。
僕は何か勘違いしている?人生において目標が全てだと思ってたけど、人生自体が目標かもしれない。
たとえ僕がなにも成し遂げられなくても悔いのない人生を生きることが目標。
でも、悔いのない人生ってなんだろう。
よく考えたけど、出てこない。
ただ、暖かな居場所があれば、そこで僕の好きな人たちが笑ってくれればそれでいいのかもしれない。その居場所を作ることこそが目的なのかもしれない。
ふとそう考えて自分を内省すると僕は守るべきものがない『からっぽ』の主人公だということに気づく。
魔王を倒した勇者は世界を『』していた。
シンデレラは王子を『』していた。
急に答えを突きつけられて、僕は眩暈がした。
『からっぽ』の心に『』を満たすには。
僕はオズの魔法使いのブリキの木こりのように、リアルの物語で足りないものを探すことにする。
それこそ、終わりなき旅を大円団で終わらせるために。
#終わりなき旅
5/31/2024, 4:02:08 AM