「何してるの?」
「ああ、ほら。マルチタスクな人材が求められる時代じゃないか」
枯れ葉の積もる公園にて、ベンチに座る少年はそう答えた。質問者の少女と、世間を交互に見比べながら。
わけがわからない。
わからないなりに理解しようと思い、少女は少年と同じように世間を見渡したり、少年の横に座ってみたりしたが、結果は。
「わかんないんだけど。意味」
答え合わせを促すと、少年は立ち上がって話し始めた。
「きみは将来有望だよ。公園に散歩に来て、世間を見渡し、ベンチで休憩しながら僕の言葉の意味まで考えた」
「それが、マルチタスク?」
「そういうことさ」
あきれた、と言わんばかりに天を仰ぐ少女。少年はその仕草になぜか驚愕した様子で、少女に問いかける。
「もしかして今、太陽の角度から時間を計算した?」
つられて見れば太陽は沈みゆく最中だったが、まだ日暮れまで時間がありそうだった。
「あるいは、通り雨を警戒したとか、鳥が来ないか見ていたとか、そうじゃないなら」
だから、一計を案じた。したり顔の少女は、諭すように言う。
「待ってたのよ、雪が降るのを」
12/15/2024, 1:17:10 PM