川柳えむ

Open App

 初めて会った君は私にしがみ付き、愛嬌を振りまいて「にゃー」と鳴いた。

 野良猫が子供を産んで里親を探していると、親戚伝いに聞いた。少し前に先代の猫を亡くしていて、縁があれば新しい子を迎えたいと丁度思っていたところだった。
 早速家族みんなで出向き、子猫達に会ってみる。
 どの子もかわいかったが、その中で一匹、まるで私を待っていたかのように飛び付いてきた猫がいた。
 その猫は私にしがみ付くと、愛嬌たっぷりに「にゃー」と鳴いた。
 もうその時点でその子しか考えられなかった。
 でも一度持ち帰って話し合おうと、その日は帰ることになった。
 その子は「にゃー!」とケージごしに大きな声で鳴いた。まるで「行かないで」と言っているようだった。

 次に出向いた時、当然その子を引き取った。
 我が家に着いたその子は、まるでこの家が元々自分のものだったかのように、家の物で遊び、疲れたらすぐ眠っていた。こんなに緊張も不安もない様子で家に来た猫は初めてだった。
 私は、この小さな命を、絶対大切にしようと。幸せにしようと心に固く誓った。

 そして現在。
「おまえなんか嫌いだー」
 何故かわからないけど急にブチギレモードに入った猫に引っかかれた。
 外に出さなかったから? 君が入っていた布団に横から入ろうとしたから? 単純に虫の居所が悪かっただけ?
 さっきまでスリスリと足に纏わり付いてきた猫と同一人物ならぬ同一猫物と同じとは到底思えないような見事な手のひら返しだよ!
 と思えば、また可愛い声で鳴いては擦り寄ってくる。なんだこいつ。
 膝の上に乗ってきたんですけど! 胸の上まで来たんですけど!
 なんだこいつ。くそっ。かっ……
「かわいー! うちの猫かわいー!!」

 こうしてこの小さな子に今日も振り回されている。しょうがないよね。
 結局この子が愛しくて何よりも大切なんです。


『小さな命』

2/25/2024, 6:36:28 AM