高台から海まで見える町並み。
朝日が町を照らし、一日の始まりを知らせている。
早朝だから、高台には誰もいなくて静かだ。
「はぁ……」
思わず溜め息が漏れる。
先月、彼女は交通事故で亡くなった。
打ち所が悪く、即死だったらしい。
もし、まだ生きていたら、隣には彼女が居ただろう。
朝日のように明るく笑って、俺を照らしてくれて……。
ズボンのポケットからスマホを取り出し、彼女の写真を映す。
いつも笑っていて、元気な彼女。
見ているだけで、色んな感情が込み上がってくる。
スマホを俺の顔の横に並ぶように持つ。
君には、この景色はどんな風に見える?
俺には、色がない町に見えるよ。
今まで色鮮やかだった町が、君がいなくなってモノクロになってしまった。
君が見た景色を……知りたい。
君の声が……聞きたい。
君と一緒に……もっと居たかった。
いっそのこと、君の元へ……。
いや、そんなことしたら、悲しませるだけだ。
君の分まで、頑張って生きて見せるよ。
俺は彼女の写真と一緒に、モノクロの町をしばらくの間ずっと見ていた。
8/14/2025, 11:31:11 PM