古菱

Open App

お題:I LOVE …

 大団円を迎えた洋画。そのエンドロールが流れるテレビ画面に向かってエイタは不満をぶつけていた。
「なんで『I LOVE』って言ってんのに字幕が『僕も』なんだよ。おかしいだろ」
「ヒロインが告白したんだからその返事としてはおかしくないでしょ」
「しかも『I LOVE』って言ったあとなんか間があるんだよ。漫画とかである、てんてんてんってやつみたいな」
「三点リーダーね」
 子供のような言い回しをしたエイタに教えてやると、彼は「それ」と私を人差し指でさした。人を指でさしちゃいけないって小さい頃に注意されてたのに、まだ直っていないらしい。
 私とエイタはいわゆる腐れ縁だ。大学生にもなるのにお互い恋人もいなくて、一緒に遊んだり映画を観たりしてる。今日もサブスクで一緒に映画を観ようという話になっただけだ。
「恥じらいとかを表してるんじゃない?」エイタの言った『I LOVE』のあとの間について、私なりの意見を述べる。
「ストレートに『I LOVE YOU』って言えばいいのに。きちんと伝わんねえかもしんないだろ」
「あんな状況で言われたらさすがにわかるって」
 主人公とヒロインの結ばれるシーンが一番最後でよかったと心底思う。そうでなきゃ、映画の途中にもかかわらず延々と続くエイタの文句にぶち切れてしまうところだった。
 水と混ざって薄くなったコーラを飲み干す。
 映画も終わったし今日は解散とするか。伸びをして立ち上がろうとした瞬間、エイタの手が私の手首をつかんだ。
「愛してる…」
 まっすぐ目を見つめて告げられる。
 今さらなに言ってんだろう。もう二十年近くずっと一緒にいる弟みたいな存在だったのに。
 笑い飛ばせない低い声が脳をぶん殴ってきて、エイタが男の人だという事実を嫌でも思い知らされた。
「このコーラをな」
 茶化した調子でエイタは二リットルのペットボトルを持ち上げる。
 からかわれたことに気づいた私は、「あんたねえ!」と声を荒らげた。
「ほら、三点リーダーにしたらわかんねえだろ」
 勝ち誇ったように笑うエイタを見ていると、どうしようもなく顔が熱くなった。

1/29/2026, 12:59:47 PM