ミキミヤ

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言葉にしなかった。言ってしまえば、きっと全てうまくいかなくなるって分かってたから。

双子の妹と、幼なじみの男の子。どっちも大好きなふたり。そのふたりが好きあって、想いが通じ合って、幸せそうに笑ってる。
こんな場面、私だって嬉しい……嬉しい、はずだった。私も彼を好きじゃなかったら。
妹も彼も、私の想いなんて知らない。ここで笑わなきゃ、笑って「おめでとう」って言わなきゃ、絶対おかしい。気づかれちゃいけない。間違っても「なんで私じゃなかったの」なんて、口にしちゃいけない。ふたりの幸せに水を差して、3人の関係を気まずくして、壊しちゃうようなこと、したくない。
だから私は、真実を胸に秘めたまま、ふたりを祝福した。まるで痛みなんてないみたいに笑って。「ふたりでデートもいいけど、私に構うのも忘れないでよね」なんてふざけてみたりして。
ふたりは「忘れるわけないじゃん」って笑ってた。

その日はいつも通り3人で遊んで、妹と2人で帰宅した。母が作る夕食をいつも通り美味しくいただいて、夜もいつも通り過ごした。
そして、妹と同じ部屋、二段ベッドの上の方、自分だけの居場所に帰ってきて初めて、胸の傷と向き合わなきゃいけなくなった。
寝るために暗くした部屋で、二段ベッドの下の方には妹が寝てる。私はバレないように静かに泣いた。

なんで私じゃなかったの。私の方が早く想いを伝えてたら、彼と付き合うのは私だった?
3人で過ごすのが心地よくて、想いを伝えることに臆病になってた私が悪かったのだろうか。だから、今、こんなに痛いのかな。

頭の中をいろいろな考えが駆け巡った。
涙はとめどなく流れた。たぶん人生で一番泣いた。
そして私は、覚悟を決めた。この真実は、一生隠し通そうと。大好きなふたりのため。ふたりのことが大好きな私のため。

隠された真実は、涙とともに、夜の闇の中、深い胸の奥底へ沈んでいった。


【隠された真実】

7/14/2025, 9:31:52 AM