先に帰っていた彼を待たせて風呂から戻ると…
ほんの少しのローストビーフとサラダと、野菜いっぱいの熱々のスープ。安物だけど意外に美味しいワインが机に並んでいた。
「えっ…ありがとう。今日なにかの記念日だっけ」
いつものように自分の席に座ると、こっちおいでと手招きをされる。
大きなちょっと荒れた手に促されるまま彼の膝に座った。
「いい匂い」
くんと首元を嗅がれてくすぐったい。
やだ、ちょっと…と言ってもびくともしない。あったかいなと手のひらがあちこちを撫で回してくる。
ああ、これ罠だったのかな。
風の音が少し前と変わったことに気付いた。かたかたと窓を揺らす。
少し冷たい頬を寄せた。
ご馳走が遠のいていく。久しぶりの泊まりで、かく言う私もなんの抵抗もできなくなっていた。
11/30/2023, 1:34:18 AM