ナヅナ

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ずっと隣で
『追いつく事の出来ない努力と才能の差』
中学の頃まで私は水泳に自信があった。高校生になって直ぐにそんな事は思えなくなった。彼女は輝いていた。どんなに足掻こうが必ず彼女には負けた。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。惨敗だった。絶望感、こんな事今まで無かったのに。練習だっていつも頑張ってたし力を抜いてなんか無かったのに。全てが徒労だったと気づいたのは入部してから暫く経った頃だった。私は疲れてしまって練習の時手を抜く様になった。顧問の先生にはどうしたんだと最初は心配していたが最近ではもう怒られるばかりだ。褒められた時にも心配された時でも思わなかったが怒らた時顧問の先生が初めて私の方を向いた気がした。中学生の時の私の言葉がふと頭によぎった。
「ゆっくりじっくりこつこつ堅実にやれば報われるから!」
違う。そんな簡単な話じゃない。それでも報われない圧倒的な才能の差があるのだから。努力なんかで埋められない。期待の超新星だって羨まれてるらしい。でも彼女はそんな言葉で表せない。所謂モンスターという奴だろう。
そんな彼女は性格も良い。こんな捻くれた私と仲良くしてくれて居る。彼女が笑ったり話しかけて来る度に辛くなってくる。彼女は余りにも眩しくて太陽の様で妬ましくて嫌いだって、でも友人と言ってくれた事に嬉しさもある。狭間で揺れて訳がわからなくなっていく一つ確かな事があるとするならば私自身の方が嫌いであるという事だ。それにしても良い子みたい、実際良い子だが彼女の言葉が信用ならない。何というか、
「大体それって何の意味があっ
「どうしたの?」
「えっ!ああ何でも無いよ!大丈夫!」
「そう?それでさ、良ければ今日新作が出たって言ってたし買いに行かない?勉強続きで疲れたでしょ。無理ならそれで全然良いけど気分転換にどうかなって!」
純粋な笑顔で笑う彼女。何処までも私は彼女に負け続ける。そもそも水泳は個人競技だからその人の努力や才能で決まる。それに疲れて勝手に彼女から離れたら彼女は悲しがる。これからも私は一番近くでずっと隣で彼女という太陽に焼かれ続けていくんだろう。
「参りました。」
今度こそ彼女に聞こえない様にそっと話す。
チャイムの音でかき消された声は誰にも届かず消えた。少し前で彼女が帰ってきた途端に集まるクラスメイトの姿が見えた。


『憧れのあの人』
私には憧れの人がいる。泳ぐ姿や堂々としていて凛とした表情はかっこよくって笑っている所は可愛い。同い年とは思えなかった。水泳に興味を持ったのは彼女がいたから。あの人みたいになりたいって思って彼女みたいになれる様にって頑張った。高校は彼女と同じ所にたまたま入れた。部活もクラスも一緒だったから仲良くなる事が出来て嬉しかった。そんな彼女が最近様子が可笑しい。何か考え事をする様になって、少し態度がよそよそしい気がする。これだけなら何も思わないがあんなに真剣に取り組んでいた水泳の練習に手を抜く様になった。何があったのか、それは分からないけどいつか教えて貰える様にずっと隣で支えてあげられたらいいな。

3/13/2026, 11:03:27 AM