1000年先も
夜明けの街は仄暗く、行き交う人も疎らであった。ギターケース背負う少年は、線路沿いを歩いた。始発列車が走る頃、少年はまだ歩いていた。白む朝に少年は、雪に跡をつけ、歩いて行った。月の落とした砂埃、少年はそれを纏っていた。赤ら顔の少年は倒れかけたその足で、バス停近くのベンチに座った。到底バスを待てる顔ではなかった。バスが停まると、少年はふらついた足どりで、バスに乗った。バス停を3つ、4つと跨ぐと少年は、覚悟を決めたような表情で、バスを降りた。乗車賃を払うと、少年のポケットには20数円しか残っていなかった。少年の父親は、幼い頃に離婚した。少年の母親は、余命宣告を受けた、1年と8ヶ月後に死んだ。余命を1年以上伸ばしたが、諦めの悪い顔で、長い夜に死んだ。少年は何度も転んだ。紫色になった唇を噛み締めて立ち上がった。少年は歩いた。遠くへ行くため。ようやく太陽が見えそうになった時、暗澹たる雲行きが少年を包んだ。少年はそれでも歩いた。遠くへ行くまで。すると少年は躓いた。躓いたが、躓いたが、……少年が起き上がることは無かった。道半ばで倒れた少年は、否、そもそも道など無かったかもしれない。それでも少年は幸せそうな顔をしていた。少年の幸福に満ちたこの顔が、1000年先も微笑んでいたなら、
2/4/2026, 6:58:18 AM