『どこまでも』
果てしなく続く空。
雨上がりの空には無理やり差し込んだ光が濡れたアスファルトを照らし、空だけは晴れたふりをしている。
濡れた靴を脱ぎ、裸足になり海辺を駆け抜け、制服には砂が着いてしまったがそれでも私は走り続けた。
地平線が見える海は私をどこまでも連れて行ってくれる気がし、私は歌を歌った。
溢れ出る涙に、しゃくり上げる声に歌が混ざり合い、
海の香りはしょっぱく、そして、雨上がりの海は冷たかった。
その冷たさは私を包み込み、海の音が私の心を優しく抱きしめた。
声が震えても、涙が混ざっても、歌は私の中から溢れ出た。
波は足元をさらっては引いていき、砂の上の足跡は瞬く間に私を置いていき、私の涙の跡も波は優しく拭った。
びしょびしょになったスカートを搾り、私はすっかりと乾いたアスファルトの上に跡を残した。
雲の切れ間から覗く光は私を照らし、道路に浮かぶ水たまりに星を映した。
風が髪を揺らし、濡れた頬を撫でた。
私は、どこまでも、歩いて行ける。
ある哲学者は言った。
楽しいから笑うのではない、笑うから楽しいのだ。
人は幸せだから歌うのではない。
歌うから幸せなのだ。
10/12/2025, 1:38:02 PM