のなめ

Open App

ぼくの、いちばんはじめのきおく。

まっくらで、つめたいばしょから、ぼくをつれだしてくれた、おおきなてのひら。

さいしょ、びっくりしてひっかいたぼくを、やさしくだきしめてくれた、《ほんださん》。

だいじょうぶだよ、だいじょうぶ、こわくないよ、って。

そのこえが、ほんとうにやさしくって、あったかくって、ぎゅっとくっついたのを、おぼえてる。

だからね、こわくないよ。

《ほんださん》のふるえるてのひらが、ぼくのあたまをなでる。

ごめんね、ごめん、こんなことのために、つれてきたわけじゃなかったんだ、って。

だいじょうぶ、しってるよ、ぼくはびょうきだから、だめなんだって、《しょちょーさん》がいってたもんね。

でもね、ほんとうにぼく、しあわせだったんだ。

あ、でも、いたくないといいなぁ、なんておもいながら、ぼくのあたまをなでる《ほんださん》に、さいごにぎゅっとくっついた。

10/30/2024, 11:01:31 AM